【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
エピローグ それはいつかの未来の話
 あれから十年と少しが経って。

 ――今日も、リスター伯爵邸はにぎやかだ。

「母さま! またセルファースがいじわるする!」
「はぁ!? なにいってんだよ、おまえがわるいんだろ!」

 私のほうに駆けてくるのは二人の男の子。

 彼らは六歳になる次男セルファースと、五歳になる三男ルーラント。

 年子だからなのか、性格的な相性が悪いのか。二人はずっとずっと喧嘩ばかり。

「二人とも静かにしてね。……アストリアがうとうとしてるから」

 苦笑を浮かべてそう言えば、二人は顔を見合わせて声のボリュームを落として口喧嘩を始める。

 ……多分これは、喧嘩するほど仲がいいとか、そういう奴なんだろうな。

「本当、困ったお兄ちゃんたちね」

 場の空気など気にもせずに私の腕の中でうとうととしている女の子を見て、私はそう声をかける。

 この子は私と旦那様の間に生まれた唯一の女の子で末っ子。名前はアストリア。

 生後半年にして、リスター家の面々を虜にしている。特に三人の兄はアストリアのことが可愛くて仕方がないらしい。

 セルファースとルーラントなんて、我先にと機嫌を取ろうとするんだから。

「奥さま。そろそろ抱っこを代わりましょうか?」
「ありがとう。……でも、大丈夫よ」

 声をかけてくれた侍女に私は笑みを返す。

 この子はつい最近来たばかりの新人。男爵家の令嬢らしくて、いわゆる行儀見習いとしてここに働きに来ているそうだ。

 ……私付きの侍女として、色々と身の回りの世話をしてもらっている。
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