【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第8話 晴れる疑惑
「おい、何を言って――」

 旦那様が狼狽えられているのが、よくわかった。

 その所為で、私は顔を両手で覆ってしまった。今の私は、とてもひどい顔をしているだろうから。

 女々しいかもしれない。いや、間違いなく女々しい。でも、一度心の中にこみあげた不安は消えてくれない。

「奥様の体調が悪いときに浮気するなんて、何されているんですか!」

 クレアの怒鳴るような声が聞こえてくる。開け放たれた扉の外では、使用人たちが集まり始めていた。

 きっと、何事だと思っているのだろう。心配は、かけちゃだめなのに。

「おい、何を勘違いしているんだ……!」

 旦那様が、震えるような声音でそうおっしゃる。私は、何の感情も抱けなかった。

「俺は、浮気なんてしていない!」
「じゃあ、どうして隠し事をされるんですか!?」
「……それ、は」

 クレアの言葉に、旦那様が返答を困ってしまわれる。恐る恐る顔を上げれば、旦那様は視線を逸らされていた。……わざとらしい、態度だった。

「とにかく、シェリルに言えることじゃないんだ」

 ゆるゆると首を横に振りながら、旦那様がそうちょっと厳しい声音で告げてこられた。

 ……突き放された、のよね。

(……私、どうすればいいの?)

 一抹の不安が、私の胸の中で芽生えて消えてくれない。旦那様のことを信じたい。なのに、信じられない。そんな自分が、弱く感じてしまって、自己嫌悪に陥る。
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