【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第10話 最悪の訪問者
 ◇

 私と旦那様の間にあった誤解が解けてから、早くも一週間が経った。

 この日の私は予定が何もなかったので、いつもの休日の過ごし方であるガーデニングに精を出していた。

「奥様、こちらはどうされますか?」
「そうね……。どうせだし、あちらに植え替えましょうか」
「かしこまりました」

 お庭の管理人は私ではなく庭師たちだ。けれど、彼らは私がお庭の世話をすることに嫌な顔一つ見せない。

 それどころか、私の意見を聞いてくれる。これもそれも、きっと私が『土の豊穣の巫女』だからなのだろうな。

(……最近、お花もあまり元気がないわね)

 土に触れたとき、ふとそう思った。土の魔力が枯渇しているのは聞いているし、私の体調にも影響があるからよく分かっているつもり。

 でも、ここまで大規模な枯渇は予測ではまだ先だと聞いていたのだけれど……。

(だけど、やっぱり予測が当たらないこともあるわよね)

 出来れば、一刻も早く土の魔力が元に戻って、お花たちが元気になればいいと思う。

 そんなことを考えていると、ふと誰かがこちらにやってきた。足音からして、サイラスだろうか?

 庭師たちは長靴を履いているので、この足音じゃないし。

 そう思いながら私がそちらに視線を向けると、そこには予想通りサイラスがいた。

「奥様、お庭の様子はいかがですか?」

 彼はなんてことない風にそう問いかけてくる。

 だから、私は困ったように眉を下げた。

「あんまり、よくはなさそうね」
「……さようでございますか」
「やっぱり、根本から解決しなくちゃいけないのかも」

 土に触れながら、そういう。

 私は知らないけれど、どうやらこういう自然から魔力が枯渇した際に何とかする儀式があるらしい。

 それを、するべきなのかもしれない。
< 34 / 156 >

この作品をシェア

pagetop