【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
閑話4 元婚約者(ギルバート視点)
自然と、そう思った。
けれど、いつかはシェリルにも話さなくちゃならない。それは理解していたので、俺はゆっくりと口を開くことにした。
「……アネットと俺は、双方の両親が決めたいわば、政略結婚の相手だった」
とりあえず、なれそめ……にもならない、出逢いから話そう。
そう思って、俺はそこから話し始める。
「アネットは王都貴族でな。名のある伯爵家の令嬢だった」
そんな彼女と俺が婚約することになったのは、リスター伯爵家が王都貴族とつながりを欲していたからだ。
理由はよくわからないが。あの頃の当主は父だった。父は寡黙で、必要以上に話をしようとはしなかったから。
「顔合わせのときから傲慢でな。……俺は、あんまりアネットに好感を抱けなかったんだ」
顔合わせのときのことは、未だによく覚えている。煌びやかなドレスに身を包み、豪奢な髪飾りを着けた美しい少女。でも、その表情は歪められており、彼女はこの婚約が不満なのだと一瞬で悟った。
「まぁ、不満なのは辺境に嫁ぐということだったみたいだがな」
「……そう、なのですか」
「あぁ、本人から聞いた」
いつしか、俺とアネットは三ヶ月に一度のペースで会うようになっていた。というか、両親が仲良くしなさいと無理やり引き合わせていた。
アネットはそれも不満だったらしく、いつも使用人たちにあたり散らしていた。リスター伯爵邸で会うことも、あったな。
「あいつは気性が荒くて、わがままで。挙句、そこら中で遊びまわるような奴だった」
そっと視線を上げる。シェリルの目が、揺れていた。……可愛いと思った。でも、口には出せない。
真面目な話をしているのだから、そんなことを思ってはいけないのだ。
けれど、いつかはシェリルにも話さなくちゃならない。それは理解していたので、俺はゆっくりと口を開くことにした。
「……アネットと俺は、双方の両親が決めたいわば、政略結婚の相手だった」
とりあえず、なれそめ……にもならない、出逢いから話そう。
そう思って、俺はそこから話し始める。
「アネットは王都貴族でな。名のある伯爵家の令嬢だった」
そんな彼女と俺が婚約することになったのは、リスター伯爵家が王都貴族とつながりを欲していたからだ。
理由はよくわからないが。あの頃の当主は父だった。父は寡黙で、必要以上に話をしようとはしなかったから。
「顔合わせのときから傲慢でな。……俺は、あんまりアネットに好感を抱けなかったんだ」
顔合わせのときのことは、未だによく覚えている。煌びやかなドレスに身を包み、豪奢な髪飾りを着けた美しい少女。でも、その表情は歪められており、彼女はこの婚約が不満なのだと一瞬で悟った。
「まぁ、不満なのは辺境に嫁ぐということだったみたいだがな」
「……そう、なのですか」
「あぁ、本人から聞いた」
いつしか、俺とアネットは三ヶ月に一度のペースで会うようになっていた。というか、両親が仲良くしなさいと無理やり引き合わせていた。
アネットはそれも不満だったらしく、いつも使用人たちにあたり散らしていた。リスター伯爵邸で会うことも、あったな。
「あいつは気性が荒くて、わがままで。挙句、そこら中で遊びまわるような奴だった」
そっと視線を上げる。シェリルの目が、揺れていた。……可愛いと思った。でも、口には出せない。
真面目な話をしているのだから、そんなことを思ってはいけないのだ。