【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第16話 お願い
 翌日。私はサイラスの元を訪れていた。

 サイラスは基本的に執事の部屋。もしくは旦那様の執務室にいることが多い。あとは、使用人の様子を見て回っているか。

 この日は朝から私がお願いがあると言っていたので、執事の部屋で待ってくれていた。

「奥様、わざわざこちらにいらっしゃらなくても、と……」

 サイラスが眉を下げてそう言う。だから、私は気にしないでという意味を込めて笑った。

(そもそも、サイラスだって忙しいものね)

 執事は使用人をまとめなくちゃならない。いくらこのリスター家の使用人が優秀とはいえ、トラブルが全く起きないということはない。それに、旦那様とお仕事の打ち合わせだってあるもの。

 そう思っていれば、サイラスが部屋にあるソファーに案内してくれた。私の後ろでは、クレアがちょこちょことついてきている。

「ところで、お願いがあるとおっしゃっておりましたが……」
「えぇ、サイラスに一度、相談してみようと思って」

 ソファーに腰掛けて、真剣な面持ちでサイラスを見つめる。彼は、「ふむ」と声を上げていた。

「奥様のお願いは、使用人一同叶えたいと思っております。……ですが、わざわざこういう風に時間を作ってほしいということは、あまり好ましくないお願いなのでしょうね」

 ……読まれている。

 それを認識しつつ、私はこくんと首を縦に振った。
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