【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第19話 帰る場所
 そう言ってくれたロザリアさんを、まっすぐに見つめる。

 彼女は、目を伏せていた。その所為で、上手く感情が読み取れない。

「……ですが、一つだけ言っておかねばならないことがあります」
「……はい」
「この儀式は、『豊穣の巫女』の身体に多大なる負担を与えます」

 そこまで言って、ロザリアさんが言葉を止める。

 ……私は、ただ彼女を見つめ続けた。すると、意を決したようにもう一度ロザリアさんが口を開く。

「最悪の場合は死に至ります。もしくは、ずっと目覚めないなど……」

 息を呑んだロザリアさんが、そう言葉を続けた。

 ……最悪の場合、死に至る。それは、薄々感じとっていたことだった。だから、そこまで驚きはしない。

「一つだけ、確認してもいいでしょうか?」
「はい」
「その場合、王国の土はどうなるのでしょうか?」

 私が一番気になるのはそこだった。

 『豊穣の巫女』が亡くなった場合、王国の自然はどうなるのだろうか?

(今王国に存在する『土の豊穣の巫女』は私だけ。……私がいなくなっても、土は元に戻るの?)

 もしも、私が亡くなって、土もそのままだったら……。

 想像するだけで、おぞましいことになりそうだった。

「その場合は……その」
「……はい」
「一定数魔力を送っていれば、土は回復します」

 言いにくそうにロザリアさんがそう教えてくれた。……そっか。

(だったら、万が一私が亡くなっても、一定数の魔力を送っていれば……)

 正直なところ、死ぬのは怖い。今までだったらそこまで怖くはなかったと思う。ただ、私はここで愛されることを知った。……この場所を、失いたくないと思ってしまう。
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