【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第21話 責任感
 ◇

「奥様。しばらく、休憩しましょう」

 ロザリアさんが心配したような表情で、私にそう声をかけてくれる。でも、私はゆるゆると首を横に振る。

「……時間が、ないんですよね」

 少し前。儀式を執り行う神官のお一人が、リスター家にやってきた。彼は私の現状のチェックと、詳しい儀式の日程を決めるためにやってきたらしい。

『正直なところ、一刻も早く儀式を執り行いたいのが、本音です』

 その人と少しお話をしていた際、彼は苦しそうな表情でそう零した。

 言葉の意味を私が問いかければ、彼は「……あまり、時間がないのです」と目を伏せて教えてくれたのだ。

 ……だから、私は早くしなくちゃならない。きちんと、役目を全うしなくちゃならない。

「……でしたら、少しでも早く――」

 少しでも早く、上手く魔力をコントロールできるようにならなくては。

 ほんの少しの焦り。焦燥感。そんなものが私の頭の中を支配して、離れてくれない。どうすることも出来ずに、私はぐっと下唇を噛んでいた。

「奥様。疲れは失敗を呼びます。一旦休息をとったほうが絶対にいいです」

 でも、ロザリアさんも引いてくれない。

 それは多分、ロザリアさんが私の現状をよく見ているからだろう。足元はおぼつかないし、何処となくふらふらだし。そんな私の状態を、ロザリアさんは心配してくれている。……よく、わかる。
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