【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第24話 私の好きな人は、
 アネット様とのお話の機会は、割とすぐに用意された。

 リスター伯爵家の庭園。そこで、私はアネット様と向き合っている。もちろん、私の隣には旦那様がいてくださる。彼は眉間にしわを寄せているけれど、今のところお話を妨害するつもりはないみたいだった。

「……それで、もう一度お話を……って、どういうつもり?」

 アネット様のその言葉に、私は息を呑む。けれど、すぐに気を持ち直す。

「いえ、個人的にしっかりとお話がしたく思いまして。以前は、しっかりとお話が出来なかったので……」

 肩をすくめながらそう言えば、アネット様は露骨にため息をつかれた。まるで「困った子供」とでも言いたげな眼差しで、私を見つめてこられる。……その眼差しに、微かな違和感。

(以前は、明確な敵意にも似たものを持っていたはずなのに……)

 何処か、その感情が和らいでいるような気がした。

 が、今はそれを指摘している場合じゃない。そう思い、私は背筋を正してアネット様に向き直る。

 彼女の座り方は、とても美しい。さすがは元貴族の女性……というべきか。きっと、しっかりとした淑女教育を受けていたのだと、思った。……だって、元々リスター伯爵夫人になるべきお方だったのだもの。

「私は、アネット様が明確に私を嫌っているとは、思えないのです」

 淡々とそう言ってみる。瞬間、旦那様の視線が私に向けられた。アネット様も、目を見開かれている。

 気が付かないふりをして、言葉を続ける。

「あなたさまは、私のことを嫌っている……というよりは、旦那様のほうになにかしらの感情を向けているのでは……と、思います」
 それは完全な勘だった。

 ただ、アネット様は私が倒れる際に戸惑ったような目をされていた。

 もしも、本当に私を嫌っているのならば。彼女は、もっと勝ち誇ったような笑みを浮かべるのではないだろうか?
< 88 / 156 >

この作品をシェア

pagetop