【完結】年の差十五の旦那様Ⅲ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷な辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~
第27話 償い方
「あ、あの……」

 とにもかくにも、まずはお礼を言おう。

 その一心で彼女を見つめれば、彼女は空を見上げていた。……今まで見たことがないほど、優しそうな表情だった。

「……あの子は、きっとこれを望んでいる」

 小さくそう呟いたアネット様。

 私にはアネット様の言う「あの子」の正体を知る由もない。ただ、唯一わかるのは。

 ――アネット様にとって、そのお人はとても大切な人だということだろうか。

「私ね、魔力の量だけはとてもあるの」

 ふっと口元を緩めたアネット様が、そう呟いた。

「でも、私が持っていても宝の持ち腐れよ。だから、あなたに一部を与えるわ」

 彼女の目が、私を見つめる。まるでつきものが落ちたかのような目が、私だけを映している。

 心臓がぎゅって掴まれたみたいな感覚だった。

「ねぇ、奥様」
「……はい」
「私、今からでもまともに生きることが出来ると思う?」

 その問いかけの真意は、一体なんだったのか。

 私には想像もできないし、これを推測で言うのは野暮というものだろう。

 でも、私にはわかる。

 そう思って、私は笑みを浮かべた。アネット様の視線が、和らぐ。
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