それは麻薬のような愛だった
過去との邂逅
——頭がガンガンする。
雫が目を覚ましたのは見慣れたベッドの上。
自身の家のものより大きなダブルサイズである事から考え、伊澄の家のものだろうということで早々に落ち着いた。
昨夜、タクシーに乗り込んで伊澄の電話を受け取ってからの記憶が曖昧過ぎる。
今の一糸纏わぬ姿や腰周りの重さ、脚の間の濡れ具合からも事後だという事は分かるが、どうやってここまで来たのか何を話したのか、途切れ途切れの記憶しか無い。
「…、痛った…」
頭を鈍器で何度も打ち付けられるような痛みに側頭部に手を当て蹲っていると、寝室のドアが開いた。
「…起きたのか」
伊澄の髪は濡れており、シャワーを浴びてきたのだろう。肩にかけたタオルで片側だけ拭いている姿はなんとも様になる。
「二日酔いか?」
「うん…すごい頭痛い」
あまり良くない顔色を察してか聞かれた質問に答えると、伊澄がベッドの縁に腰掛けて雫の頬を撫でた。
「昨日の事、どこまで覚えてる」
真っ直ぐに見つめてくる伊澄の目はとても真剣だった。けれどどう思い返しても、ほとんどの記憶が抜け落ちている。
「いっちゃんと電話したとこくらいまで…かな。殆ど思い出せない」
「…そうか」