それは麻薬のような愛だった
告げる覚悟
その2日後、体調の回復した美波が仕事場に出てきた為、雫は美波を夕食に誘い駅近の居酒屋チェーン店に来ていた。
「改めてごめんね、雫。担当じゃない客先訪問させちゃって」
「気にしないで、仕事だもん」
閑散期できっかり定時で上がれた為、時刻は未だ18時半を少し超えたところだ。半年続いた深夜帰宅ですっかりおかしくなった感覚を覚えつつ、まだ仕事は2日残っている為互いにソフトドリンクを注文しカウンター席に並んで座っていた。
「けど雫の方から誘ってくるの珍しいね。どうしたの?」
「ちょっと聞きたいことがあって。美波さ…山中さんとはあれからどう?」
時間をかけるのも無駄なので単刀直入に聞けば、美波は少し目を見開いた。
「それ、友達にも聞かれた。私ってそんなに分かりやすい?」
「私が気付くくらいだからそれなりだと思う」
「そっかあ。そうだね、実は週末会う約束してるんだよね」
照れたように言う美波とは対照的に雫の眉が下がる。
「あのさ…その事で私、美波に伝えておきたい事があって…」
「なに?」
きょとんと全く疑いのない純粋な表情に微かな胸の痛みを覚える。悩みはしたものの、知ってしまった事を黙っているのも忍びなく、雫は颯人から聞いた事を順を追って話した。
黙って聞いていた美波だったが、山中におそらく彼女がいると告げると少し黙り込み、コーラをひと口飲んで努めて明るく笑った。
「あー…、成る程。ま、言われてみれば確かにそんな気はするかも」
「…ごめん。確証は無いし、言うか悩んだんだけど」
「んーん。教えてくれてありがと」
美波はグラスを置くと、「そっかあ」と間延びした声を発して宙を仰いだ。
「うん…でも、その辺はちゃんとしたいしね。この後にでも連絡して聞いてみるよ」
「え?本人に直接聞くの?」
「そんなの当たり前じゃん!」
勢いよく顔を下ろし、美波はグッと雫へ体を寄せる。