それは麻薬のような愛だった
過去と現在
それを見たのは偶然、12月の初旬。例の如く伊澄がやってきた夜のことだった。
「えっ、うそ!」
夜のバラエティ番組での遊園地特集で、雫の大好きなマスコットキャラクター達に更に仲間が増えた事をそこで初めて知った。
テレビにかじりつき身を乗り出す雫に伊澄は怪訝そうに声をかける。
「なんだ、また着ぐるみ増えるのか」
「着ぐるみって言わないで!」
ムキになって返す雫は再び画面向こうの可愛らしいキャラクターに視線を戻す。
「知らなかった…最近忙しくて全然チェックしてなかったからなあ…」
学生の頃は年間パスポートを買ってその遊園地によく遊びに行ったものだが、社会人になり気軽に行けなくなり今は時折遠方の友人が遊びに来る時に行く程度に減ってしまった。
遊園地といっても絶叫系の苦手な雫のお目当てはもっぱらそのマスコットキャラクター達で、現在雫の部屋の衣装棚の上には6体の人形達が並べられている。
そのキャラクター達は今も雫の趣味である手芸によって定期的に衣装が着せ替えられており、クリスマスを目前にした今はもれなく全員サンタの服を着せられている。