【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

一章 地獄から天国へ


──わたしはいらない存在だった。

ティンナール伯爵家に長女として生まれたヴァネッサは悲劇の道筋を辿る。
父と母は政略結婚でそこには愛はなかった。
ヴァネッサを産んで母は運悪く亡くなってしまう。

父は母の葬儀を終えてすぐに義母を連れてきたらしい。
彼女のお腹はすでに膨らんでいて、妹のエディットを身籠もっていたそうだ。
二人は愛し合って結婚したのだと乳母が成長したヴァネッサにそう教えてくれた。

その時からだ。ヴァネッサの屋敷での居場所はなくなっていく。
父も義母もはヴァネッサを疎んでいたと思う。
ヴァネッサはただでさえ病弱で体が弱く、ほとんど部屋で過ごしていた。
それに肌も弱く痒くて眠れないほどだった。
病弱で咳が止まらずに高熱で起き上がれない日々を繰り返す。
医師はヴァネッサを診て『これは治ることはない』と言った。
ヴァネッサは咳が落ち着く時もあるし、肌もクリームを塗れば痒みは治ると主張するも首を横に振る。
何故、自分の言葉を聞いてくれないのか、幼いヴァネッサにはどうにもできなかった。
ヴァネッサを診ていた医師たちの背後には、義母が唇を大きく歪めているのが見えた。

(……どうして? わたしの病気は本当に治らないの?)
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