【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

三章 交差する想い


「……なるほど。ワシを三十分も待たせたのにはそんな理由があったわけだ」

「申し訳ありません。陛下」

「よいよい、急に連絡したワシも悪いからな」


ギルベルトはそう言いつつも手を動かしていた。
診察を終えて、遅れを取り戻すように薬の調合を手際よくやっていく。
椅子に腰掛けているのはヨグリィ王国の国王でギルベルトの従兄弟だ。

(時間に遅れるなど、俺らしくもない……)

ヴァネッサの願いを受け入れたのは、ギルベルトも体力的にも精神的にも限界だったからだ。
もしあのままだったら調合を間違えて一大事になっていたかもしれない。
または途中で倒れて意識を失い、薬を作ることができなかったのかもしれない。
結果的にはヴァネッサのおかげで防げたといっていいだろう。
だが忙しいヨグリィ国王の時間を取らせてしまったのは事実だ。


「よいよい、可愛い妻の願いじゃないか。むしろお前の体調を気遣うなど立派ではないか!」

「…………」

「それにお前の悪癖を抑え込める貴重な人材だな」

「悪癖? 何のことです?」

「無理をして働きすぎるところに決まっている。体調を崩して娘を悲しませなくてよかったじゃないか」


ヨグリィ国王はそう言ってニヤリと笑う。
すべてを見透かされているようだ。
無理をしすぎて体調を崩せばアンリエッタに心配をかけてしまう。
実際、何度も彼女に心配かけて泣かせてしまったことがあった。
今回はそれが避けられてよかったと思うべきだろうか。
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