悪役令嬢と誤解され王子から婚約破棄を言い渡されましたが私にどうしろというのでしょう?
第四章 再びジェリーナ

人の優しさに甘えてもいいのですか?

人目につかないように、ひとまず会場から離れて再び中庭に出た。
今は入場のピーク。
しばらくここに隠れて、人気がなくなるのを待つしかないわね…。

もしかしたら、またブライが探しに来るかもしれない。
窓から死角になる大きな木の陰に隠れた。
木漏れ日が気持ちいい…。

静かにたたずんでいると、なぜ自分がこんな状態になっているのか不思議でたまらなくなる。
生まれてからずっと続けていた努力は何だったんだろう。
子ども時代にアルと王宮内でかくれんぼをしたことを思い出した。
私たち、あのころはとても仲良しで、お互い一緒に過ごす時間を楽しんでいたのに…。

いけない。
また涙が溢れてしまいそう。
こんな気持ちを抱えたまま、私は結局アルと結婚するのだろうか…。
アルはブライになら反論も拒否もできるけれど、国王様や王妃様にはきっと何も言えないだろうな…。
王命ならば従うしかない身なのだから。

「ジェリーナ様」

いけない!見つかった…!
反射的に振り向くと、そこにはルイザの兄、カルシスがいた。

「ここにいらしたんですね。見つかって良かった…」

カルシスはホッとした表情をしている。
私は警戒した。
彼が誰の命で私を探していたのかわかるまで油断できない。
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