悪役令嬢と誤解され王子から婚約破棄を言い渡されましたが私にどうしろというのでしょう?

卒業パーティーがカオスですわ…

カルシスの言葉に甘えて、私はエスコートを頼むことにした。
気持ちが完全に落ち着くまで木陰で休んでから、カルシスと2人で卒業パーティーの会場へ向かう。
会場に近くなるにつれ、自分の緊張が高まっていることを感じる。

「もしも、アルノート様が今までの間違いを反省して心を改め、ジェリーナ様との未来を真剣に考えたらどうしますか?」

無言で歩いていると、カルシスから唐突に問いかけられた。
アルが反省…?
全く想像できないわ…。

「人は誰もが間違いを犯します。
もちろん、今後国王になるアルノート様の間違いは、国家を揺るがす大問題です。
それでも、アルノート様も1人の人間ですから間違うこともあるでしょう。
間違ったあとの行動によって、未来は大きく変わるものです。
本人が間違いを認め、反省し、周囲と協力して乗り越えた先には大きな成長があります。
今回のことで、もしかしたらアルノート様はジェリーナ様の大切さに気付くかもしれません」

「カルシス様はアルの…アルノート様のあのときの顔を見ていないから、そんなことが言えるのですわ」

勝手に妄想を膨らませ、私を悪女だと思い込み、あの女に夢中になったアル。
その経験が成長を促す?
そんなことあるはずがないわ。

「そうですね…私はジェリーナ様とアルノート様の間に起こったことをこの目で見たわけではありません。
想像で物を言ってしまったことを謝罪させてください。
それでも…今一度聞かせてください。
アルノート様が自分の間違いを認めたならば、悔い改めるチャンスを与える寛容な心はありますか?」

「ありません」

私はキッパリと即答した。
私の気持ちは、もうアルに向いていない。
今日の出来事で、完全にアルへの愛情は冷めてしまった。

「わかりました」

カルシスはなぜか笑顔で頷いた。

「さぁ、もうすぐ会場に着きます。事の成り行きを一緒に見守りましょう。
もちろん、ジェリーナ様がしたいようになさって構いません」

どういう意味?
思わずカルシスを見上げると、不敵な笑みを返された。
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