悪役令嬢と誤解され王子から婚約破棄を言い渡されましたが私にどうしろというのでしょう?

触れられるのも嫌な相手と結婚なんてまっぴらごめんですわ!

誰も言葉を発しない。
さっきまで泣いていた女の子たちも静かになった。
ときどきすすり声が聞こえてくるけれど。

アルは緊張からか硬直している。
アルは幼いころから父親である国王陛下に頭が上がらないのよね。

「アルノート、この騒ぎはなんだ?説明しなさい」

国王陛下の低い声が会場内に響き渡る。
アルは固まったままかと思いきや、なぜかパッと私を見た。

え…なに?
アルが私の方に歩いてくる…。
また私を悪者にするつもりなの?

「なにも問題ございません」

そう言って私の手を取るアル。

どういうこと!?

とっさに手を振り払おうとした私を理性が止めた。
今日、この卒業パーティーで私とアルの婚約発表を行うことを決めたのは国王陛下だ。
国王陛下の前で手を振り払うのは、王命に背くことになるかもしれないわ…。

「丁度皆の注目が集まっているところです。父上、私たちのことを報告してもよろしいでしょうか?」

ギョッとしてアルを凝視してしまった。
まさか…しれっと私と婚約発表してこの状況を誤魔化すつもり?
自分から婚約破棄を言い出したことを水に流せると思っているの?
嫌悪感でアルに握られた手が冷たくなるのがわかるわ…。

「アルノート様…」

私とアルだけに聞こえるような声でつぶやいたのはリリアだ。
アルは反射的にリリアを見る。

あの女…瞳を潤ませてアルを見つめてる…。

と思ったら、私たちの方に近寄ってきた。
リリアに寄り添うようルイザもやってくる。
何をするつもり…?
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