ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
22.リアムからの招待状
エリスの懐妊が判明してから、早七日が経った日の午後。
シオンは辻馬車に揺られ、エリスと共にルクレール家の屋敷に向かっていた。
三日前にリアムから招待を受けた、お茶会に参加するためだ。
――が、せっかくのお茶会だと言うのに、シオンはずっと浮かない顔をしている。
その理由は他でもない。これから開かれるお茶会に、いくつかの心配事があるからだった。
(あっという間にこの日が来ちゃったな。姉さんの体調も気になるし、オリビア嬢や使用人たちに姉さんの正体を悟られないようにしないと……。気が抜けないな)
シオンは――今日は体調がいいのだろう――外の景色を穏やかな瞳で眺める、エリスの横顔を見つめる。
(きっと姉さんは今、『どうやってオリビア嬢と仲良くなろう』とか考えてるんだろうな。姉さんは人を疑うことを知らないから。まあ、それが姉さんのいいところなんだけどさ)
――などと考えながら、一週間前のあの日のことを思い出した。