ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
23.ルクレール家でのお茶会
お茶会当日。
ルクレール家の屋敷に到着した二人は、リアム直々に出迎えられ、オリビアの待つ温室へと通された。
ランやアオイを初めとした熱帯植物や、パキラやオリーブなどの観葉植物。それに、モモやザクロなどの温帯果樹が植えられた立派な温室だ。
温室の中心にはお茶を入れるためのワゴンと、四人分のアフタヌーンティーの用意がされた丸テーブルと椅子があり、オリビアはうちの一脚に、背筋をピンと伸ばして腰を下ろしていた。
今年十七歳を迎える、ルクレール侯爵家の第二子・オリビア。
リアムと同じラベンダーブラウンの髪に、それと同系色の透き通った瞳。
目鼻立ちのくっきりとした人形のように愛らしい見た目だが、その眼差しは遥か遠くを見つめるように凛としており、どこか冷たさを感じさせる。
唇は微笑んでいるというより、横に引き結ばれており、よく言えば無表情。悪く言えば愛想がない――と判断されるだろう佇まいだ。
そんなオリビアは、兄リアムと共に温室を訪れた二人の姿を見て、すっ、と美しい所作で立ち上がった。
四人は、セッティングされた丸テーブルの脇に立ち、さっそく挨拶を交わす。
「改めまして、リアム・ルクレールと申します。こちらは妹の――」
「オリビアですわ。どうぞよろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。エルサ・ノイマンと申します。ランデル王国から、夫の付き添いで参りました。そして隣が――」
「弟のシオンです。本日はお招きいただき、とても嬉しく思います」
今日のエリスの目的は、ランデル王国の商家、ノイマン家の三男の妻・エルサとして、オリビアと仲良くなることだ。(尚、ノイマン家とはシオンのランデル王国での学友の家名で、実際に商いを生業としている)
(正体を隠したまま、というのは気になるけれど……リアム様もそう望まれたから、エルサとして頑張らなくちゃ)