ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

27.ジークフリートとの再会


「殿下、わたくし、シオンと共に祖国に戻ろうと思いますの」

「――は? エリス、今、何と……」
 
「ですから、実家に帰らせていただきます。女性に怪我を負わせて平気でいられるような方となんて、恐ろしくてこれ以上一緒にはいられませんもの」

「……ッ!」

 アレクシスは絶句した。

 目の前のエリスの、軽蔑したような表情に。
 彼女が口にした、突然の別れの言葉に――。

 アレクシスは、必死に弁解しようとする。

 ――待て! 待ってくれ! と。

 俺は知らなかったんだ! 何一つ、知らされていなかったんだ……!
 オリビアを怪我させるつもりなんて、少しもなかった! だから、話を聞いてくれエリス……!

 ――だがその声は、少しも言葉にならなかった。
 辛うじて、掠れたような息が漏れるだけだった。

(声が……出ない……!)

 シオンの手を取り、背を向けるエリスを引き留めようと、アレクシスは必死に手を伸ばす。
 けれどその手は虚しく空を掻き――次の、瞬間――。
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