ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

35.アレクシスの帰還


「――何? エリスが帰っていないだと?」


 同日の暮れ、アレクシスはエメラルド宮の使用人からエリスがまだ戻っていないことを知らされ、大きく眉をひそめた。

「はい。エリス様は本日昼頃、マリアンヌ様と会うためシオン様と共に帝国図書館に向かわれたのですが、予定の時刻を過ぎてもお戻りにならず。おかしいと思っていた矢先、この手紙が、門兵に……」

 使用人たちは、本来エリスは午後四時頃には戻る予定だったことを説明しながら、一枚のメモを差し出す。
 するとそこに書かれていたのは、ほんの短い一文。

『訳あって、数日姉を預かります。殿下が戻られるまでは、内密にしていただきたく。 シオン』

「――っ」

 これを読んだアレクシスは、全く理解し難い内容に、鋭く目を細めた。

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