ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

45.再会


 気付いたときには、エリスはアレクシスに抱きしめられていた。

「すまなかった、エリス」と。
「もう何も心配はない」と。

 どこにも逃がさないとでも言うように、強く強く抱きしめられる。

 そんなアレクシスの言動に、エリスは悟らざるを得なかった。


(ああ……殿下はもう、噂の真相を知っていらっしゃるんだわ)


 そうでなければ、アレクシスがこんなことを言うはずがない。

 ここまで必死になって自分を探す理由がない。

 アレクシスの鼓動が早いのは、彼がこんなにも呼吸を乱しているのは、噂を流したのがリアムであることを既に知っているから。

 だからこうして、アレクシスは自分に謝っているのだろう。

 昨夜ジークフリートが言ったように、『リアムが噂を流した原因は自分にある』のだと、自責の念を感じているのだろう。


「……殿下、……わたくし」


 全ては推測に過ぎないけれど。

 アレクシスが何を思っているのか、本当のところはわからないけれど。

 心のどこかでは、リアムとの関係を疑われている可能性も残っているけれど。

 だとしても、今アレクシスに抱きしめられていることは現実で、それだけが、今のエリスの全てだった。

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