ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
50.クロヴィスの忠告
それから少し後、アレクシスは宮廷に併設された訓練場の中心で、兄クロヴィスと対峙していた。
セドリックやクロヴィスの騎士ら、その他の若い貴族軍人らの観客が固唾を呑んで見守る中、模造刀を正面に構え、クロヴィスと睨みあっていた。
(なるほど。稽古を怠っていないというのは本当だったようだな。現役を退いて七年経って尚、隙のないこの構え。流石兄上と言うべきか)
そんなことを考えながら、クロヴィスに問いかける。
「兄上。先ほどの言葉、忘れていませんよね」
すると、ニコリと口角を上げるクロヴィス。
「勿論だ。お前が勝ったら、例の条件を無くしてやろう」
「絶対ですよ」
「ああ。皇族の名にかけて誓おう」