ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

50.クロヴィスの忠告


 それから少し後、アレクシスは宮廷に併設された訓練場の中心で、兄クロヴィスと対峙していた。

 セドリックやクロヴィスの騎士ら、その他の若い貴族軍人らの観客(ギャラリー)が固唾を呑んで見守る中、模造刀を正面に構え、クロヴィスと睨みあっていた。


(なるほど。稽古を怠っていないというのは本当だったようだな。現役を退(しりぞ)いて七年経って尚、隙のないこの構え。流石兄上と言うべきか)

 そんなことを考えながら、クロヴィスに問いかける。

「兄上。先ほどの言葉、忘れていませんよね」

 すると、ニコリと口角を上げるクロヴィス。

「勿論だ。お前が勝ったら、例の条件を無くしてやろう」
「絶対ですよ」
「ああ。皇族の名にかけて誓おう」
< 234 / 237 >

この作品をシェア

pagetop