【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜

51.オリビアの訪問


 アレクシスがクロヴィスとの手合わせを終えてしばらく経った頃、エリスはエメラルド宮の自室で、シオンからの返事を待ち続けていた。


(遅いわね。まだ戻ってこないなんて、何かあったのかしら)


 エリスは、時間の経過と共に膨らんでいく不安に押しつぶされそうになりながら、窓からじっと、正門の方の様子を伺う。



 エリスがシオンへ宛てた手紙を侍女に預けたのは、三時間以上も前のこと。

 そのときエリスは、遅くとも二時間もあれば、侍女は戻ってくるだろうと考えていた。

 宮から学院までの距離は、馬車で片道三十分程度。

 今日は平日で講義があるとはいえ、業者や外部の研究員が多く出入りする学院では、講義中であろうと生徒を呼び出すことが可能だ。その為、侍女がシオンに会うのは何ら難しいことではない。
 だから、何かトラブルでもない限り、すぐに戻ってくるだろうと。
 
 だが実際は、三時間が経った今も、侍女が戻ってくる気配はない。


(流石に遅すぎるわ。もしかして、シオンはまだ学院に戻っていないのかしら)

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