【完結】ヴィスタリア帝国の花嫁Ⅱ 〜婚約破棄された小国の公爵令嬢は帝国の皇子に溺愛される〜
66.答え合わせ
――その日の夕方、空が橙色に染まりかけた頃、エリスはシオンと二人、庭園を散歩していた。
ほとんどの花が枯れてしまうこの季節、一年草のパンジーやビオラ、アイビーなどで彩られた花壇の間を歩きながら、二人は他愛のない会話を弾まていた。
「そしたら教授が彼に、"――"って言ってさ」
「まあ! それで、その方はどう返したの?」
「それがね――」
シオンはこの一週間、宮の外に出られないエリスの為に、授業が終わり次第こうして通ってくれている。
おかげでエリスは、アレクシスの帰りが遅い日も、寂しさを紛らわすことができていた。
(シオンがいてくれて良かったわ。一人だと、どうしても色々と考えすぎてしまうから)
リアムとオリビアが帝都を発って一週間。
あの日からエリスは、エメラルド宮を一歩も出ていない。
その前の週もアレクシスはエリスの外出を許さなかったので、この二週間の間に外に出たのは、決闘のときだけということになる。
正直、不満がないと言えば嘘になるが、エリスはアレクシスが外出を禁止するのは自分を守るためだと気付いていたため、アレクシスに従おうと決めていた。
とは言え、時間が有り余って仕方がないのも事実。
そんな状況で、シオンが毎日話し相手になってくれるというのは、心から有難いことだった。