整形ストーカー
同棲開始
寮を出るに当たって必要な両親からのサインは、剛志が筆跡を変えて記入した。
こんなのすぐにバレて実家に電話されてしまうと思ったけれど、以外にもそういう展開にはならなかった。

私達が作った偽物の書類は簡単に通り、本当に寮から出られることになったのだ。
「荷物はこれで全部?」
迎えに来てくれた剛志が私の大きなボストンバッグを持って質問する。

「うん。他のものは郵送にしたから、持っていくのはこれだけだよ」
元々ほとんどの荷物を実家に置いてきているので、引っ越しと言っても簡単なものだった。

ボストンバッグひとつと、ダンボールがふたつ。
それが、私が寮で使っていたもののすべてだ。

剛志の部屋がどのくらいの広さかわからないけれど、これくらいの荷物ならきっと難なく入ることだろう。

「本当に行くの!?」
剛志と共に歩き出したときそんな声が聞こえてきてすぐに立ち止まるはめになってしまった。

顔を見なくても声だけでわかるそうになった存在。
だけど最近はなんとなく距離ができて、あまり会話していなかった人。

「雪菜」
私は振り向いてその人の名前を呼んだ。

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