整形ストーカー
お人形
私は雪菜の昔話を信じられない気持ちで聞いていた。

すべてが嘘ならいいのにと何度も思ったけれど、話の中に出てくる私は記憶の中にある自分と一致していた。

2年生の文化祭ではメイド喫茶をしたし、美術部にも所属していた。
「千尋がいなくなったときは本当に心配したんだよ? 色々と探し回ったし、あの男のアパートまで行った」

それでも千尋を助けることは難しかった。
千尋が暴力を振るわれているのだって、知っていたけれどなにもできなかった。

「だからウチ、強くなったんだよ。ちょっとのことでは物怖じしなくなったし、力もつけた。スタンガンだって、扱えるようになった」

雪菜が床に置いていたスタンガンを手に取ったので全身が硬直した。

「あはは。今は使わないから、安心して? だけど千尋があまりに聞き分けがないと、また使っちゃうかもしれないから気をつけてね?」
雪菜はそう言うとこれみよがしにスタンガンのスイッチを入れて見せた。
青い火花がバチバチと音を立てる。

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