鬼縛る花嫁~虐げられ令嬢は罰した冷徹軍人に甘く激しく溺愛されるが、 帝都の闇は色濃く燃える~

朝を迎えて・1

「ん……」

 昨夜の激しい快楽で気を失ってしまってた鎖子は、夢うつつで目を覚ました
 鬼の力を喰らう恐ろしい鎖の儀……でもとても甘美な時間だった。

 それは、要がとても優しかったから……。
 
 沢山口づけをして、抱き締めあって、名前を呼び合って……。
 
 まるで心から愛されているかのような、激しくも甘い時間だった。

 心地よい疲れに、要のぬくもり。
 まどろむ鎖子が頬に感じたのは、要の唇……?

「鎖子……まだ眠いだろうが……そろそろ時間だ」

「あ……か、なめさ、ま……ぁ」

 優しく頬に口づけされ、頭を撫でられた気がする。
 まだ夢の中のようで、鎖子はホワホワした気持ちで目を瞑りながら微笑んだ。

「……まだ眠たいよな……」

 また優しく撫でられる。
 でも要のぬくもりが離れていって、眠気のなかでも寂しくなる。

「ん……要さま……どこ……ですか……」

「俺はここだ。まだ寝ていたいが……そろそろあいつらの確認がある。起きてもらえないだろうか」

 うっすらと目を開けると、既に浴衣を着ていた要が懐中時計で確認している。
 
「……あ……んん……かなめさま……」

 まだ、頭がしっかり動かずぼーっとしてしまう。
 要がそばにいるのを見て、ホッとして鎖子は子どものように自然に微笑む。
 
 こんな事は久しぶりだった。
 まだ夢の中にいるような……。
 
「身体は大丈夫か? よく耐えてくれた」

 また頭を撫でられた……。

 嬉しい……心地よい……嬉しい……。

 まだまだ、抱き締めていてほしい……。
 また口づけしてほしい……。
 昨日の続きを、またしたい……。

「鎖子?」

 まどろんでいた鎖子だが、段々と正気に戻ってくる。

「あ……か、要様は……お身体は……」
 
「俺は、もちろん大丈夫だ。お前の身体を……他の奴らに見せたくないから浴衣を着てほしい」

 要は鎖子を見ないようにして言った。

「あっ……きゃ……すみませ、すみません! 私ったらなんてことを……!」

 自分だけ裸のまま布団で寝ていた! と気付いた鎖子は正気を取り戻して慌てふためく。
 
「慌てなくていい。準備ができるまで待たせるから大丈夫だ」

 慌てる鎖子に、要は新しい浴衣を渡してくれる。
 
「俺は向こうを向いているから、ゆっくり支度してくれ」
 
「は、はい。い、いえ急ぎます」

 寝ぼけた顔で、一人で眠っていたと考えると恥ずかしくて顔から火が出そうだ。

「すまないな」

 要が向こうを見ている間に、鎖子はすぐに浴衣を着た。
 髪も整え、一つに結ぶ。
 顔を洗ったりする事は、許されていない。

 鎖子で準備ができた事を確認して、要は人を呼んだ。

「準備ができたぞ」

「それでは、失礼いたします」

 黒装束の男たちとは違う、女医と看護師数名がやってきた。
 彼女達は、布団に敷かれたシーツを確認する。
 沢山の体液が混ざりあってこぼれたシーツは、ピンク色に染まっていた。
 鎖子は恥ずかしさで、顔を手で覆う。

「悪趣味が過ぎるな」

「重要な確認でございます。それでは要様、腹部に浮き出た呪術紋を確認をさせてください」

「あぁ」
 
 それから、要の腹の呪術紋を眺め、紋の形を絵に描きとる。

「はい、確かに確認いたしました。血液も採取しますね。……では、鎖子様の呪術紋の確認と体液も採取致します」

「なんだと? 必要な事があるのなら俺だけにしろ。妻の身体には指一本触れるな」

 分泌物の採取も驚いたが、要の口から妻と言われるとドキリとしてしまう。

「しかし……」

「なにか文句があるのか。柳善縛家当主を辱めるような真似をするな」

 ゆらりと、要の殺気が揺れる。

「し、しかしこれは金剛様からの命令で……」

「ならばいくらでも待つから、確認をしてこい」

「か、要様、私は大丈夫です……! お腹の呪術紋をお見せしますから、確認してください」

 鎖子のお腹に、浮き出た呪術紋を見せる。
 下腹部の違和感も感じたが、昨夜の事を思い出してしまい鎖子はずっと頬が赤いままだ。
 
「それでは、映させていただきます……では触診と体液の採取を……」

「えっ……触診?」
 
「そんなものは不要だ……何度言ったらわかる。紋を確認したのに、何故そんな事をする必要がある?」

「しっかりと鎖の儀を果たしたのかという証明を……」

「つまりは俺が不能の可能性がある、と?」

「い、いえ、とんでもない!」

「俺を調べたいならいくらでも調べろ。鎖子には触れるな。俺からの伝聞だと金剛殿と早々に伝えろ」

「は、はいぃいい!」

 女医達は一度出て行った。
 結局、鎖子は触れられることなく、要からの体液採取で事なきを得た。
 はぁ……と鎖子は安堵の息を吐く。
 
< 22 / 78 >

この作品をシェア

pagetop