鬼縛る花嫁~虐げられ令嬢は罰した冷徹軍人に甘く激しく溺愛されるが、 帝都の闇は色濃く燃える~
誤解同士・2
鎖子を手に入れるために、金剛の罠を利用したという要――。
「父ももういない。帝国だとか五大家だとか、俺にはどうでもいい。お前が手に入るなら、あんな女いくらでも斬り殺してやる」
「……要様……」
鎖子は言葉に詰まってしまう。
「狂っているだろう。高めた能力が奪われようが、九鬼兜家の名誉が損なわれようが、かまわなかった。そしてお前を花嫁に迎えて、鎖の儀で抱いた……。この世に怖いものなどないが……でもお前にまた触れて、更に憎まれることは怖い……」
お互いに手を強く握りあったまま、見つめ合う。
「わ、私は……そんな風に思って頂いて、心が震えそう……いえ、震えています」
「狂っている俺が、怖いだろうな」
要は鎖子の手を離しかけたが、鎖子はその手を離さなかった。
「いいえ……嬉しくて震えているんです……要様が、こんなにも私を愛してくれていたなんて……」
「……鎖子」
鎖子の瞳から涙が溢れる。
狂っていても、それでもいい。
鎖子は、誰もが狂っていると思うだろう話を聞いても、要の激しい愛に喜びを感じている自分に気付く。
「要様にとって罰での結婚では、なかったのですね……」
「俺が心から望んだ結婚だ。……他の誰にも渡したくないし、他の誰にも触れさせない」
「……要様」
「鎖子を想って、長い留学生活にも耐えてきた……お前は俺の人生の光なんだ」
泣き笑うような顔で、要は微笑む。
どれだけ過酷な留学生活だっただろうか。
「私もです……あの家の地獄のなかでも生きてこられたのは、要様との思い出があったからです。ずっと……誇り高くいようと、貴方を想って辛くても耐えることができました」
「花嫁にするという約束は……覚えていたか?」
二人の記憶に蘇る、幼い頃の約束。
ほんの短い時間に交わした約束が、二人の胸のなかでずっと輝いていた。
「もちろん覚えています。私は、夢が叶って幸せだったんです。要様の花嫁になれて、嬉しかったのです」
「……俺だけが嬉しいと思っていた」
「嬉しいに決まっています! だって私は、すごくすごく要様をお慕いしております!」
鎖子の想いが弾けて、要が鎖子を抱き締めた。
「俺も狂おしいほど愛している……一番に伝えるべきだったのに、すまない」
抱き合った二人に伝わる、愛しい人のぬくもり。
「手紙を……私が読めなかったから悪いのです」
「鎖子は何も悪くない。何か悪意が動いたんだろう」
「……お手紙を読んでいたら、すぐにでも要様のもとに行っておりました」
葬儀の後、要に嫌われてしまったと……絶望の時もあった。
それでも要を想うことで、ここまで耐えて生きてこられたのだ。
今、やっと要の胸に抱かれて、要の愛に包まれて、寂しさも哀しみも流れて消えていく。
「順番が逆になってしまったが……鎖子、俺の花嫁になってほしい」
「……はい……私を要様の花嫁にしてください」
二人で手を取り合って、口づけた。
狂わされた二人の運命が、愛が混ざりあっていく。
「嬉しいです……こんな私を好いてくださるなんて……」
「お前は誰よりも可愛い……」
頬に口づけされる。
「好きだ……お前がすごく好きだ。ずっと会いたかった」
「要様……私もずっと帰ってくるのをお待ちしておりました。要様が大好きです……」
「……鎖子はいつでも可愛すぎて……触れないように必死で我慢していたんだ」
優しく甘い声の囁き。
突然の甘い言葉の連続で、鎖子の心は高鳴る。
「そ、そんな……」
「鎖子は男の欲を知らないから、誤解をしたんだ。俺は、鎖の儀のあとに少しでも鎖子に触れたら、歯止めが利かなくなると……自制していた。毎日可愛くて……触れぬように、我慢していた」
「先程も……?」
「当然だ。口づけしそうになったから、慌てて離れただけだ」
甘い空気を、わざと冷たくしていたのは鎖子のためだった。
「そんなにも想ってくださったなんて……」
「お前を手に入れるためなら、なんでもするような狂った男だぞ、俺は……」
「要様が狂っているのならば、私も同じです。だって、要様のお気持ちが……すごく嬉しいんですもの」
鎖子を花嫁にするため、躊躇なく人を殺した要。
長年の成果も、家の名誉も手放した。
狂った男の愛。
それに怯えることなく、鎖子は喜びを感じている。
狂っている愛に、もう二人で堕ちている……。
「鎖子……」
切なく、熱っぽい瞳で見つめられ、鎖子は瞳を閉じた。
触れあう唇。
言葉がなくても、熱い唇がお互いの気持ちを伝えてくれる。
「要様……んっ」
徐々に舌が絡んで、身体が熱くなる。
「はぁ……すまない……お前の身体が心配だというのに……」
「わ、私は大丈夫です……何も心配はいりません」
「さっきも言ったが、鎖子は男の欲を知らないからだ……また抱きたくなってしまうだろう」
「……あっ……」
「だから同じベッドに眠れるわけがない」
「わ、私は……要様と……離れたくありません……それが望みだから……です……」
なんて大胆な事を! と鎖子は恥ずかしさで真っ赤になってしまった。
要が鎖子の頭を撫でて、微笑む。
「可愛すぎるんだ、鎖子は」
「だって……寂しかったのです……」
「すまなかった。ではもう、我慢しない」
「きゃ……」
鎖子を抱き上げて、要は寝室へと向かった。
「父ももういない。帝国だとか五大家だとか、俺にはどうでもいい。お前が手に入るなら、あんな女いくらでも斬り殺してやる」
「……要様……」
鎖子は言葉に詰まってしまう。
「狂っているだろう。高めた能力が奪われようが、九鬼兜家の名誉が損なわれようが、かまわなかった。そしてお前を花嫁に迎えて、鎖の儀で抱いた……。この世に怖いものなどないが……でもお前にまた触れて、更に憎まれることは怖い……」
お互いに手を強く握りあったまま、見つめ合う。
「わ、私は……そんな風に思って頂いて、心が震えそう……いえ、震えています」
「狂っている俺が、怖いだろうな」
要は鎖子の手を離しかけたが、鎖子はその手を離さなかった。
「いいえ……嬉しくて震えているんです……要様が、こんなにも私を愛してくれていたなんて……」
「……鎖子」
鎖子の瞳から涙が溢れる。
狂っていても、それでもいい。
鎖子は、誰もが狂っていると思うだろう話を聞いても、要の激しい愛に喜びを感じている自分に気付く。
「要様にとって罰での結婚では、なかったのですね……」
「俺が心から望んだ結婚だ。……他の誰にも渡したくないし、他の誰にも触れさせない」
「……要様」
「鎖子を想って、長い留学生活にも耐えてきた……お前は俺の人生の光なんだ」
泣き笑うような顔で、要は微笑む。
どれだけ過酷な留学生活だっただろうか。
「私もです……あの家の地獄のなかでも生きてこられたのは、要様との思い出があったからです。ずっと……誇り高くいようと、貴方を想って辛くても耐えることができました」
「花嫁にするという約束は……覚えていたか?」
二人の記憶に蘇る、幼い頃の約束。
ほんの短い時間に交わした約束が、二人の胸のなかでずっと輝いていた。
「もちろん覚えています。私は、夢が叶って幸せだったんです。要様の花嫁になれて、嬉しかったのです」
「……俺だけが嬉しいと思っていた」
「嬉しいに決まっています! だって私は、すごくすごく要様をお慕いしております!」
鎖子の想いが弾けて、要が鎖子を抱き締めた。
「俺も狂おしいほど愛している……一番に伝えるべきだったのに、すまない」
抱き合った二人に伝わる、愛しい人のぬくもり。
「手紙を……私が読めなかったから悪いのです」
「鎖子は何も悪くない。何か悪意が動いたんだろう」
「……お手紙を読んでいたら、すぐにでも要様のもとに行っておりました」
葬儀の後、要に嫌われてしまったと……絶望の時もあった。
それでも要を想うことで、ここまで耐えて生きてこられたのだ。
今、やっと要の胸に抱かれて、要の愛に包まれて、寂しさも哀しみも流れて消えていく。
「順番が逆になってしまったが……鎖子、俺の花嫁になってほしい」
「……はい……私を要様の花嫁にしてください」
二人で手を取り合って、口づけた。
狂わされた二人の運命が、愛が混ざりあっていく。
「嬉しいです……こんな私を好いてくださるなんて……」
「お前は誰よりも可愛い……」
頬に口づけされる。
「好きだ……お前がすごく好きだ。ずっと会いたかった」
「要様……私もずっと帰ってくるのをお待ちしておりました。要様が大好きです……」
「……鎖子はいつでも可愛すぎて……触れないように必死で我慢していたんだ」
優しく甘い声の囁き。
突然の甘い言葉の連続で、鎖子の心は高鳴る。
「そ、そんな……」
「鎖子は男の欲を知らないから、誤解をしたんだ。俺は、鎖の儀のあとに少しでも鎖子に触れたら、歯止めが利かなくなると……自制していた。毎日可愛くて……触れぬように、我慢していた」
「先程も……?」
「当然だ。口づけしそうになったから、慌てて離れただけだ」
甘い空気を、わざと冷たくしていたのは鎖子のためだった。
「そんなにも想ってくださったなんて……」
「お前を手に入れるためなら、なんでもするような狂った男だぞ、俺は……」
「要様が狂っているのならば、私も同じです。だって、要様のお気持ちが……すごく嬉しいんですもの」
鎖子を花嫁にするため、躊躇なく人を殺した要。
長年の成果も、家の名誉も手放した。
狂った男の愛。
それに怯えることなく、鎖子は喜びを感じている。
狂っている愛に、もう二人で堕ちている……。
「鎖子……」
切なく、熱っぽい瞳で見つめられ、鎖子は瞳を閉じた。
触れあう唇。
言葉がなくても、熱い唇がお互いの気持ちを伝えてくれる。
「要様……んっ」
徐々に舌が絡んで、身体が熱くなる。
「はぁ……すまない……お前の身体が心配だというのに……」
「わ、私は大丈夫です……何も心配はいりません」
「さっきも言ったが、鎖子は男の欲を知らないからだ……また抱きたくなってしまうだろう」
「……あっ……」
「だから同じベッドに眠れるわけがない」
「わ、私は……要様と……離れたくありません……それが望みだから……です……」
なんて大胆な事を! と鎖子は恥ずかしさで真っ赤になってしまった。
要が鎖子の頭を撫でて、微笑む。
「可愛すぎるんだ、鎖子は」
「だって……寂しかったのです……」
「すまなかった。ではもう、我慢しない」
「きゃ……」
鎖子を抱き上げて、要は寝室へと向かった。