鬼縛る花嫁~虐げられ令嬢は罰した冷徹軍人に甘く激しく溺愛されるが、 帝都の闇は色濃く燃える~
鎖重ねの術・1
酔雨家と摩里多家当主は、その場で帰ってしまった。
処置する別の和室に呼ばれ、そこには確かに叔母もいる。
愛蘭のことで何か言われるかと思ったが、何も言わずつまらなそうな顔をしていた。
金剛の部下の呪詛師二人が施すということで、検査着に着替えて布団に横たわり腹部だけ見せる。
「なんて美しい呪術紋だ……」
不気味だったのが、叔父の反応だ。
今まで、そんな素振りを見せたことがなかったのだが、鎖子の腹部の呪術紋と入手したという秘術が書かれた紙を食い入るように見ている。
「あまり妻の身体を見るな」
「……ここの紋が……なるほど……お前たち、ここの紋の部分に……」
要の注意も耳に入らないほど熱中して、呪詛師達と呪術紋の書き足しについて話している。
その横では叔母が白けた目で、用意されたワインを飲み干していた。
この場にいる必要があるのかどうかも疑問なほど、何もしていない。
呪詛師達が、筆に赤い液体を含ませて鎖子の腹に書き足していく。
「大丈夫か、鎖子」
「はい……熱さを感じますが……痛みはありません」
要は横たわる鎖子の手を握り、異常はないかずっと監視してくれている。
「金剛様、和博様。これで準備は完了かと……」
呪詛師達が、頭を下げた。
金剛と、叔父が鎖子の呪術紋を眺めて満足したように笑う。
「ふむ。これで更に、力を減退化できるのだな! ガッハッハ! 避妊の呪術紋も加えられ一石二鳥だな! ガッハッハ!」
「……避妊の術まで施して、何故そこまで統率院に操作される必要が?」
鎖子を隠すように、間に入った要が金剛を睨む。
「罪人の子を産んだ前例がないからだろう! 罪を償い反省したあとで……子を成せばいい」
「まだ若いのだから、自由に性行為を楽しませてあげようという親心じゃあないか」
ただただ不快な二人だ。
体調になんら変わりはないが、この不快な鬼人達と一緒にいたくない。
「じゃあ、鎖子。今回もしっかりと断罪を執行するんだ。違う部屋に布団を用意してある」
「儀式の後に検査確認し、要殿は後日に俺と手合わせをしてもらうか! ちゃあんと弱くなっているか確認せねばな!」
「手合わせはいくらでもしましょう。検査の確認とは一体?」
「え~そりゃあ、鎖子の穴の検査じゃないの~? しっかり、九鬼兜要殿の体液が注がれているかどうかってねぇ?」
叔母を要が睨みつける。
要の殺気に叔母は慌てて、呪詛師の影に隠れた。
「下品な事を……ふざけるな」
「いやいや。検査は必要だ。性行為が確実に行われたかの確認と呪術紋が定着したかの確認だよ」
叔父が淡々と言う。
「しかし……!」
「か、要様……! 女医の方なのですよね? それならば検査でも私は我慢いたします」
鎖子も当然に羞恥心はある。
だが、何を言っても叔父達が引き下がる事はないだろう。
「ガッハッハ! さすがは鎖子姫! まずはお互いの気分も高めて励まねばな! 酒や媚薬も用意はしてある。夜までには頼むぞ」
「くっ……」
「要様」
まだ昼間だ。
鎖子と要は風呂で身を清めて、浴衣に着替え、二人でまた布団の敷かれた部屋に入る。
初夜の時と同じ和室だ。
贅沢な膳と酒が用意されている。
「鎖子……すまない」
「謝らないでください……私は大丈夫です。儀式を終わらせて、お家に帰りましょう」
「そうだな……夜までにと言われたし、まずは座って飯でも食べるか……? 食欲はあるか? 食べられるものを取り寄せても……」
いつでも気遣ってくれる要に、鎖子は抱きつく。
「要様……大好きです」
「鎖子……俺もだ」
「まだお身体も……お疲れですよね」
壮絶な夜を越えてから、まだ一日しか経っていない。
一緒に風呂に入ってから、何度も愛し合ったのも昨日のことだ。
「大したことはない。……あぁ俺がもう疲れて、鎖子を抱けないと思って心配しているのかな」
「そ、そんな……心配というか……」
「酒や媚薬などなくても、俺はいつでも可愛い花嫁を愛せるよ」
「要様……」
要に指先で頬を撫でられ、鎖子は頬を染めてしまう。
「だが、こんな状況ですまな……」
謝ろうとする要の頬に鎖子が触れた。
「要様……私は平気です……そんな風に要様が辛そうなお顔をされている方が私は辛いです。どうか……もう謝らないでください」
「あぁ、ありがとう。お前は優しい」
「優しいのは、要様です」
二人で微笑み合う。
儀式だとしても、二人きり。
彼等がいないだけで鎖子の気持ちもまだ落ち着いてきた。
処置する別の和室に呼ばれ、そこには確かに叔母もいる。
愛蘭のことで何か言われるかと思ったが、何も言わずつまらなそうな顔をしていた。
金剛の部下の呪詛師二人が施すということで、検査着に着替えて布団に横たわり腹部だけ見せる。
「なんて美しい呪術紋だ……」
不気味だったのが、叔父の反応だ。
今まで、そんな素振りを見せたことがなかったのだが、鎖子の腹部の呪術紋と入手したという秘術が書かれた紙を食い入るように見ている。
「あまり妻の身体を見るな」
「……ここの紋が……なるほど……お前たち、ここの紋の部分に……」
要の注意も耳に入らないほど熱中して、呪詛師達と呪術紋の書き足しについて話している。
その横では叔母が白けた目で、用意されたワインを飲み干していた。
この場にいる必要があるのかどうかも疑問なほど、何もしていない。
呪詛師達が、筆に赤い液体を含ませて鎖子の腹に書き足していく。
「大丈夫か、鎖子」
「はい……熱さを感じますが……痛みはありません」
要は横たわる鎖子の手を握り、異常はないかずっと監視してくれている。
「金剛様、和博様。これで準備は完了かと……」
呪詛師達が、頭を下げた。
金剛と、叔父が鎖子の呪術紋を眺めて満足したように笑う。
「ふむ。これで更に、力を減退化できるのだな! ガッハッハ! 避妊の呪術紋も加えられ一石二鳥だな! ガッハッハ!」
「……避妊の術まで施して、何故そこまで統率院に操作される必要が?」
鎖子を隠すように、間に入った要が金剛を睨む。
「罪人の子を産んだ前例がないからだろう! 罪を償い反省したあとで……子を成せばいい」
「まだ若いのだから、自由に性行為を楽しませてあげようという親心じゃあないか」
ただただ不快な二人だ。
体調になんら変わりはないが、この不快な鬼人達と一緒にいたくない。
「じゃあ、鎖子。今回もしっかりと断罪を執行するんだ。違う部屋に布団を用意してある」
「儀式の後に検査確認し、要殿は後日に俺と手合わせをしてもらうか! ちゃあんと弱くなっているか確認せねばな!」
「手合わせはいくらでもしましょう。検査の確認とは一体?」
「え~そりゃあ、鎖子の穴の検査じゃないの~? しっかり、九鬼兜要殿の体液が注がれているかどうかってねぇ?」
叔母を要が睨みつける。
要の殺気に叔母は慌てて、呪詛師の影に隠れた。
「下品な事を……ふざけるな」
「いやいや。検査は必要だ。性行為が確実に行われたかの確認と呪術紋が定着したかの確認だよ」
叔父が淡々と言う。
「しかし……!」
「か、要様……! 女医の方なのですよね? それならば検査でも私は我慢いたします」
鎖子も当然に羞恥心はある。
だが、何を言っても叔父達が引き下がる事はないだろう。
「ガッハッハ! さすがは鎖子姫! まずはお互いの気分も高めて励まねばな! 酒や媚薬も用意はしてある。夜までには頼むぞ」
「くっ……」
「要様」
まだ昼間だ。
鎖子と要は風呂で身を清めて、浴衣に着替え、二人でまた布団の敷かれた部屋に入る。
初夜の時と同じ和室だ。
贅沢な膳と酒が用意されている。
「鎖子……すまない」
「謝らないでください……私は大丈夫です。儀式を終わらせて、お家に帰りましょう」
「そうだな……夜までにと言われたし、まずは座って飯でも食べるか……? 食欲はあるか? 食べられるものを取り寄せても……」
いつでも気遣ってくれる要に、鎖子は抱きつく。
「要様……大好きです」
「鎖子……俺もだ」
「まだお身体も……お疲れですよね」
壮絶な夜を越えてから、まだ一日しか経っていない。
一緒に風呂に入ってから、何度も愛し合ったのも昨日のことだ。
「大したことはない。……あぁ俺がもう疲れて、鎖子を抱けないと思って心配しているのかな」
「そ、そんな……心配というか……」
「酒や媚薬などなくても、俺はいつでも可愛い花嫁を愛せるよ」
「要様……」
要に指先で頬を撫でられ、鎖子は頬を染めてしまう。
「だが、こんな状況ですまな……」
謝ろうとする要の頬に鎖子が触れた。
「要様……私は平気です……そんな風に要様が辛そうなお顔をされている方が私は辛いです。どうか……もう謝らないでください」
「あぁ、ありがとう。お前は優しい」
「優しいのは、要様です」
二人で微笑み合う。
儀式だとしても、二人きり。
彼等がいないだけで鎖子の気持ちもまだ落ち着いてきた。