鬼縛る花嫁~虐げられ令嬢は罰した冷徹軍人に甘く激しく溺愛されるが、 帝都の闇は色濃く燃える~
夫婦での逢引・2
馬車でも二人は離れずに、寄り添う。
「今日は、鎖子が自分で選んで欲しいものを買うといい。いつも俺が選んだものばかりだったしな」
「欲しいもの……は、ありません。もう十分に頂いております。沢山の贈り物、ありがとうございます」
「リボンも新しいものを買ってはどうだ」
今日も、要からもらったリボンを付けている。
鎖子の髪を撫でながら、要は紅いリボンも撫でた。
「これは、私の宝物ですから」
「では宝物を沢山増やそうな。まずは活動写真か歌舞伎でも見るか」
「活動写真……! 行きたいです!」
鎖子の瞳が輝く。
活動写真とは映画のことで、今では一般市民の娯楽でもある。
愛蘭から自慢話を何度も聞かされたが、鎖子は当然に行ったことはない。
行ってみたいと、ずっと思っていた。
「なんでもやりたい事を叶えてやる。思う存分に帝都を楽しもう」
「はい……!」
柳善縛家の屋敷より、九鬼兜家の屋敷の方が帝都に近い。
馬車に揺られて、帝都に入り、そこから数十分歩いて賑やかな中心部に着いた。
「すごい人……!」
桜は散って、もう花見の時期も過ぎたが今日も帝都は賑わっている。
背の高い建物、広い道路に押し迫る人達。
そして沢山の人が、それぞれ和装や洋装で着飾り楽しそうに歩いている。
「だよな。毎度人の多さに圧倒される」
「留学先にも、こんな場所がありましたか?」
「あぁ。中心部はすごい人だったよ。数回しか行ったことがない……人混みは苦手だ」
「要様……御無理されていますか?」
「鎖子と一緒ならば、どんな場所でも悪くない。さぁ離れないように」
ぎゅっと手を握られた。
「か、要様」
まだ若い男女が一緒に並んで歩く事は、破廉恥だと言われる事もあった。
「海外では男女が手を繋いで歩くなど、普通だ。それに俺達は夫婦なのだから咎められる筋合いもない」
「はい……!」
若い男女が手を繋ぎ歩く姿に振り返る者もいるが、要の傍では不安もなにもない。
「俺もまだ帰国して浅いからな。なんでも面白そうなものを試してみるか」
「はい」
寄り添いながら、二人で歩く。
帝都を遊びで歩くことも、両親が亡くなってからは初めてだった。
活動写真は活動弁士の語りも、楽隊の音楽も素晴らしく、まわりの盛り上がりも相まって有意義な時間になった。
鎖子が珍しくはしゃぎ、楽しんでいる様子を見て要も微笑む。
レストランでは、ライスカレーを食べて、アイスを浮かべたレモンソーダも飲んだ。
「まぁ美味しいです。お口の中がシュワシュワします! 爽やかで、なんて素敵な甘味でしょうか。アイスクリームも冷たくて甘くて……美味しいです」
「嬉しそうで何よりだ」
要は良い香りのコーヒーを飲んでいる。
お互いに会話上手ではないが、何も話さなくとも見つめ合う時間に幸せを感じる。
まわりからは二人を見て『女優さん?』『俳優さん?』『綺麗なお二人』とヒソヒソと会話の声が聞こえた。
「キャラメルやカステラなどは屋敷の皆へ買ったが……本当に鎖子は、欲しいものはないのか?」
「はい、もう全て満たされておりますので」
鎖子の希望で、梅達への土産を買った。
これ以上に欲しい物は、本当にない。
二人での帝都での逢引。
この想い出だけで、鎖子の心は幸せで満たされていた。
「……では、宝石店に付き合ってくれないか?」
「宝石店、ですか?」
要の提案に、鎖子は少し驚いた。
「今日は、鎖子が自分で選んで欲しいものを買うといい。いつも俺が選んだものばかりだったしな」
「欲しいもの……は、ありません。もう十分に頂いております。沢山の贈り物、ありがとうございます」
「リボンも新しいものを買ってはどうだ」
今日も、要からもらったリボンを付けている。
鎖子の髪を撫でながら、要は紅いリボンも撫でた。
「これは、私の宝物ですから」
「では宝物を沢山増やそうな。まずは活動写真か歌舞伎でも見るか」
「活動写真……! 行きたいです!」
鎖子の瞳が輝く。
活動写真とは映画のことで、今では一般市民の娯楽でもある。
愛蘭から自慢話を何度も聞かされたが、鎖子は当然に行ったことはない。
行ってみたいと、ずっと思っていた。
「なんでもやりたい事を叶えてやる。思う存分に帝都を楽しもう」
「はい……!」
柳善縛家の屋敷より、九鬼兜家の屋敷の方が帝都に近い。
馬車に揺られて、帝都に入り、そこから数十分歩いて賑やかな中心部に着いた。
「すごい人……!」
桜は散って、もう花見の時期も過ぎたが今日も帝都は賑わっている。
背の高い建物、広い道路に押し迫る人達。
そして沢山の人が、それぞれ和装や洋装で着飾り楽しそうに歩いている。
「だよな。毎度人の多さに圧倒される」
「留学先にも、こんな場所がありましたか?」
「あぁ。中心部はすごい人だったよ。数回しか行ったことがない……人混みは苦手だ」
「要様……御無理されていますか?」
「鎖子と一緒ならば、どんな場所でも悪くない。さぁ離れないように」
ぎゅっと手を握られた。
「か、要様」
まだ若い男女が一緒に並んで歩く事は、破廉恥だと言われる事もあった。
「海外では男女が手を繋いで歩くなど、普通だ。それに俺達は夫婦なのだから咎められる筋合いもない」
「はい……!」
若い男女が手を繋ぎ歩く姿に振り返る者もいるが、要の傍では不安もなにもない。
「俺もまだ帰国して浅いからな。なんでも面白そうなものを試してみるか」
「はい」
寄り添いながら、二人で歩く。
帝都を遊びで歩くことも、両親が亡くなってからは初めてだった。
活動写真は活動弁士の語りも、楽隊の音楽も素晴らしく、まわりの盛り上がりも相まって有意義な時間になった。
鎖子が珍しくはしゃぎ、楽しんでいる様子を見て要も微笑む。
レストランでは、ライスカレーを食べて、アイスを浮かべたレモンソーダも飲んだ。
「まぁ美味しいです。お口の中がシュワシュワします! 爽やかで、なんて素敵な甘味でしょうか。アイスクリームも冷たくて甘くて……美味しいです」
「嬉しそうで何よりだ」
要は良い香りのコーヒーを飲んでいる。
お互いに会話上手ではないが、何も話さなくとも見つめ合う時間に幸せを感じる。
まわりからは二人を見て『女優さん?』『俳優さん?』『綺麗なお二人』とヒソヒソと会話の声が聞こえた。
「キャラメルやカステラなどは屋敷の皆へ買ったが……本当に鎖子は、欲しいものはないのか?」
「はい、もう全て満たされておりますので」
鎖子の希望で、梅達への土産を買った。
これ以上に欲しい物は、本当にない。
二人での帝都での逢引。
この想い出だけで、鎖子の心は幸せで満たされていた。
「……では、宝石店に付き合ってくれないか?」
「宝石店、ですか?」
要の提案に、鎖子は少し驚いた。