鬼縛る花嫁~虐げられ令嬢は罰した冷徹軍人に甘く激しく溺愛されるが、 帝都の闇は色濃く燃える~

研究所・1

 
 柳善縛家から帰宅した鎖子は、要に柳善縛家での出来事を報告した。

「何もわからなくて……申し訳ありません」

「あいつらが何か企んでいる事がわかっただけでも、収穫だ。よく頑張ったな」

「要様……」

 どんな時でも労ってくれる。
 要が指揮官として、部下に慕われる理由がわかる。

「お互いに一層、用心しよう。柳善縛家の力の謎は、俺も追ってはいるんだが……辿り着けない。大学校の隣にある研究所でも、昔から鬼人の力を研究していてな。そこなら、まだわかるかもしれないが、俺では管轄外で手出しできない」

「研究所……なんてあったのですね」

 大学校の敷地内にそんなものがあったとは、知らなかった。

「あぁ。特殊な場所だからな。存在は機密ではないが、宣伝するものでもないから知らなくて当然だ。……帰国したばかりで、そこまで人脈も伸ばせず……すまない」

「要様の謝ることではありません。任務だけでも大変ですのに、ご無理なさらないでください」
 
「大学校の寮生活も、あと少しだが気をつけるんだぞ。将暉には特にな」
 
「はい。もうすぐ通いになりますし、気をつけます」
 
 要は心配したが、鎖子は何か大学校で情報を求められないかも気になったし、何より生徒として務めも果たしたい。
 鎖子は大学校へ復帰した。

「鎖子ちゃーーん! 今日も疲れたねぇ!」

「希美ちゃん、お疲れ様でした」

 訓練や夕飯を終えて、就寝前の希美との時間。

「鎖子ちゃん、これ食べて~? いつももらってばっかりだから。さっき夕飯前に従兄弟の兄貴が来てさ、お菓子くれたんだ~」

 希美が、小さな饅頭をニ個差し出す。
 確かに、希美がいない時間があったのを思い出す。

「えっ従兄弟のお兄様が、こちらにいらっしゃるのですか?」

 確か、知り合いは誰もいないと言っていたはずと鎖子は思い出す。

「あ、軍にはいないんだ。隣のさ~鬼人の力や妖魔を研究してる建物あるでしょ。そこで従兄弟の兄貴が働いてるんだ」

 まさに、要が言っていた研究所のことだ。

「……それって、鬼どんな力があるのか……とか研究してる……っていうお話ですね」

「そうそう。鬼人の強さを強化する薬とか、九鬼兜家の強さの秘密とか調べたりしてるんかな~」

「……柳善縛家の、力も研究されているんでしょうか」

「えー? 鎖子ちゃんの家だよね? 五大家だもん。当然してるんじゃないかな~? わかんないけど」

 希美は笑って、饅頭を食べ始める。 

「希美ちゃん、そのお兄様にお会いすること……研究所に少し見学させてもらえることはできるでしょうか?」

「鎖子ちゃんそういうの興味あるの?」

「そ、そうなの……もしも柳善縛家の力について教えてもらえたら……とか色々思うところがあって」

 柳善縛家の力について、研究員が知っているのならば直接聞きたいし、何か金剛達の企みに繋がる情報があるかもしれない。

「じゃあ、兄貴に聞いてみるね! 見学できるのは、多分休みの日だけどいい?」
 
「ありがとうございます! 無理をさせて申し訳ありません……!」

 謝る鎖子に、希美が抱きつく。

「もう! 敬語はナシだってぇ~! 私達、友達でしょ……!」

「はい……あ、えっと」

「うん! でいいの!」

「……うん……!」

 思いがけない人脈から、研究所への道ができた。

 
 
 
< 63 / 78 >

この作品をシェア

pagetop