最期の晩餐

鯖の味噌煮

「どう? 奈々未。仕事、楽しい?」

 同じ大学の一学年上だった仲良しの先輩・美知さんに「パスタ食べに行かない?」と誘われ、仕事が終わるやいなや、ウキウキしながら最近オープンしたばかりのオシャレなイタリアンへ行き、長すぎてメニューを閉じた瞬間に忘れた名前のパスタを「何だかよく分からないけど美味しいね」「オシャレな味がするね」などと言いながら食べていると、未知さんが私の仕事の様子を伺ってきた。

「至って普通ですね」

 大学を卒業して以来、私は管理栄養士として給食センターで働いている。仕事内容に不満はないし、人間関係も悪くない。『給料がもう少し良ければいいのに』とは思うけど。

「そっか……」

 美知さんが、つまらなそうな表情を浮かべながら、パスタをクルクルとフォークに巻き付けた。

 この人、私の仕事が上手くいっているのが面白くないのか? さては……。

「美知さん、仕事で何かありました?」

 美知さんも管理栄養士の仕事をしていて、ホスピスで働いている。きっと職場で嫌なことでもあったのだろう。

「大アリ‼」

 美知さんが、パスタを纏ったフォークの先端を、パスタよりも存在感を発揮している、トッピングのはずだが主張の激しい厚切りベーコンにグサリと刺した。
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