最期の晩餐

ハンバーグ

「温泉、最高だったー。お休みありがとうございましたー。お土産でーす」

 有休を三日取り、家族旅行を満喫した森山さんが、お土産の饅頭やクッキーを手に、今日より復帰した。

「やったー‼ 暫くはおやつ買わなくていいね‼ 嬉しい‼ ありがとうございまーす‼」

 美知さんと手を取り、二人で小躍り。実は二人とも献立作りが得意ではなく、献立を作っている最中にイライラしはじめ、お菓子を摘ままないとむしゃくしゃしてしまう悪い癖がある。

「これも食っていいぞ。俺は森山さんと違って日帰りだけど、息子夫婦と一緒に海鮮ツアーに行ってきた。魚持ってくるわけにいかねぇから、魚の形したお菓子買ってきた」

 林田さんもそっけなく土産袋をテーブルに置いた。

「え⁉ 林田さんも旅行⁉ 他人の有休に厳しかった林田さんが⁉」

 驚きのあまり、踊りをピタっと止める。

「よーし、お前は食うな」

 林田さんが私から土産袋を遠ざけた。

「ヤダ‼ 嘘嘘‼ 食べる‼ ごめんなさい‼」

 土産袋にしがみつき、死守。私の身体はもう、お菓子なしでは仕事が出来ない。

「しかし、優しいお子さんですね。旅行に連れて行ってくれるなんて」

 私がうっかり害してしまった林田さんの気分を、森山さんが回復させようと試みる。
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