最期の晩餐

煮しめ

「何、この鯵。ふわっふわ。うんまー」

 昼休み、今日も四人で林田さんが作ってくれた賄いを頂く。因みに今日は、アジフライだ。

「なのに、衣はサックサク。何で一人一枚なのー?」

 美知さんも林田さんのアジフライを絶賛。

「せめて二枚よねー。全然足りないわー」

 森山さんが美知さんと私の目を見て同意を求めるから、三人で「ねぇー」と共感した。

「育ち盛りか、ばかやろう」

 と言いつつも、喜んで食べる私たちの様子が嬉しいのか、林田さんはまんざらでもない顔をした。そんな林田さんが、

「あのよぉ、この前テレビで見たんだけどよ、なんかどこかのホスピスで、患者さんがいつでも自由に食べられるように、ファミリーキッチンにアイスを常備してるところがあったんだよ。クックチルも入れたことだし、この際ウチでもアイスの提供しないか?」

 オーダー食同様、テレビの情報を元にアイス提供の提案をしてきた。

「クックチルとアイスの関係性も、この際がどの際なのかも分かりませんが、それ良いと思います‼ 早速院長に相談してみますね、林田さん」

 美知さんは、グッドアイデアを出す人間に親指を立てるのが癖なのか、今日も林田さんに向かってピーンと親指を伸ばした。
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