失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます～愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました～

エピローグ

　暖かく過ごしやすい日が続いたかと思えば、急にガクンと気温が下がるので、なんとも落ち着かないが、一年のうち比較的過ごしやすい気候となる十一月初旬。

　紅葉のおすすめスポット特集があちこちで組まれ、さまざまなところから秋を感じる。

　今日、私は光輝さんとともに実家に足を運んでいた。

「か、かわいいー。小さい」

　十月十八日、予定日を数日過ぎて妹の可南子は無事に男の子を出産した。名前は凌空(りく)と名づけ、母子ともに健康で先日退院したところだ。

　これからしばらくは、実家ですくすくと成長していくのだろう。出産の報せを聞いて病院に駆けつけたが、あのときは可南子をねぎらうのと赤ちゃんを見るだけだったので、こうして抱っこするのは実は初めてだ。

「未可子、抱っこうまいな」

「いえいえ。正直、緊張で腕がプルプルしています」

　可南子は今、隣の部屋で休んでいる。赤ちゃんは数時間おきに起きるらしいので、育てるのは本当に大変だ。

「光輝さんも抱っこしてみます？」

「いや、いい」

　即座に否定され、少しだけ落胆する。とはいえ妻の妹の子なので遠慮もあるだろう。

　私たちの結婚式は九月に執り行い、参列者は予想通り圧倒的に光輝さんの方が多かった。鷹本化成や警察関係者など、収容人数から式場を決めたほどだ。

　私の希望をあまり聞いてやれなかったと光輝さんは気にしていたけれど、別の日に親しい友人や職場の同僚を招待して、カルペ・ディエムでレストランウェディングを開いたので、私の希望は……子どもの頃からの夢は叶った。