記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい

4.

「え、と……港町のサバドに向かいたいのです。実家に戻るところなのですが、実家はそこからさらに北にあるので乗り換える必要がありまして……」
「まぁ、サバドですか?」
 コリンナの顔がより一層明るくなった。
「モンクトン商会はサバドにあります。私たちは王都での用を終え、サバドに戻るところだったのですが……その前に買い物をと思っていたら先ほどの男たちが……」
 身なりのよい母子だったため、狙われたのだろう。しかも昨日は王太子の結婚パーティー。普段よりも、身なりのよい者たちが王都に集まっているから、金目の物を狙うには絶好の機会だ。
「他にお付きの人とかはいないのですか?」
「え、と……いたのですが……はぐれてしまって……」
 なるほど、とアリシアは心の中で手を打った。隙を突かれて彼女たちは狙われたのだ。そういった隙を突くのがうまいのが、暴漢でもある。人の目のつかないところで、身なりの良さそうな人たちを襲い、金品を奪う。場合によっては、その身体すら。
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