記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
第二章

1.

 港町サバドは、ユグリ国の玄関口として知られ、毎日多くの船を迎えている。国内の船はもちろん、近隣諸国の船もその対象だ。物資の補給のために立ち寄る船も多い。
 ウミネコの鳴き声と潮騒に、活気あふれる人々の声が重なり、人や物の往来が盛んな非常に賑やかな街である。
 また、サバドの住民は人当たりが良く、誰に対しても分け隔てなく接する。その気質が物の流通を後押ししていた。
 しかし最近では、見知らぬ者の出入りが増え、治安の悪化がささやかれている。
 この問題に頭を悩ませつつも、よそ者を安易に排除することはできない。それがユグリ国内の流通全体に影響を及ぼし、さらには近隣諸国との関係悪化を招きかねないからだ。
 となれば、彼らを受け入れながらも、犯罪が起こりにくい街を作ればいいと言い出したのは、モンクトン商会の商会長のボブだ。
 街の裏にいる貧しい子どもたちを養護院で引き取るように指示を出し、さらにそこで簡単な読み書きができるように教育を施す。
 そしてボブは自信に満ち溢れた声で言う。
「もちろん、それにかかる費用はモンクトン商会が出す」
< 47 / 100 >

この作品をシェア

pagetop