記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい

4.

 モンクトン商会は、単なる商家ではない。世界をまたにかけるその影響力は、国も認めざるを得ない。
 商会が保有する魔石鉱山は、ユグリ国にとって軍事や経済の要となる戦略資源である。この鉱山から産出される魔石は、魔法技術やエネルギー供給に不可欠であり、国の存立に直結する。そのため、ユグリ国はモンクトン商会を野放しにはできないのだ。
 さらに、商会会長の夫人が隣国ギニー国の貴族令嬢であることも、事態を複雑にしている。ギニー国との歴史的な対立を背景に、ユグリ国はモンクトン商会が他国に魔石を流出させたり、ギニー側に寝返ったりする可能性を常に警戒していた。実際、過去には鉱山の利権を巡る外交摩擦も起きており、商会の一挙手一投足が両国の緊張を高める火種になりかねない。
 だからこそ今、ユグリ国はモンクトン商会の手綱を固く握ろうとしているのだ。
 これが、シアの考えでもあった。
 だが、面倒くさいと思うコリンナの気持ちも共感できる。なによりこれから、王太子がシアの授業を見学に来るというのだ。
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