記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい
5.
ボブによると、王太子はひと通りの授業を見学するため、昼前に養護院に来るらしい。それから昼食時は、他の場所を視察にいき、午後の授業の後半から剣術の授業を見学するという流れになっている。
しかも子どもたちにはいつも通りでいてほしいということから、恐らく授業の途中に後ろの扉からこっそりと入ってくるのだろう。子どもたちは背中を向けているから、偉い人たちが教室に入ってきても気づかないかもしれないが、教室全体を見渡せるシアからしてみれば、丸見えである。
だから後ろの扉がそろりと開いて、見知らぬ者たちが教室に入ってきた様子を目にしたとき、大きく心臓が音を立てた。
遠目から見ても、彼が王太子ランドルフであるとわかった。月光のようにきらめく銀糸の髪に、澄んだ空のような青い目。ただその場に立っているだけでも気配が異なり、ふわっとあたたかな風が花を揺らしたかのように、教室内の雰囲気が変わった。
それに彼の両隣に立つ近衛騎士。そのうち左隣に立つ騎士と目が合った、ような気がした。濃紺の髪に紫色の瞳とは珍しい。そんなふうに思って、つい視線を向けてしまったのだ。
「……先生?」
しかも子どもたちにはいつも通りでいてほしいということから、恐らく授業の途中に後ろの扉からこっそりと入ってくるのだろう。子どもたちは背中を向けているから、偉い人たちが教室に入ってきても気づかないかもしれないが、教室全体を見渡せるシアからしてみれば、丸見えである。
だから後ろの扉がそろりと開いて、見知らぬ者たちが教室に入ってきた様子を目にしたとき、大きく心臓が音を立てた。
遠目から見ても、彼が王太子ランドルフであるとわかった。月光のようにきらめく銀糸の髪に、澄んだ空のような青い目。ただその場に立っているだけでも気配が異なり、ふわっとあたたかな風が花を揺らしたかのように、教室内の雰囲気が変わった。
それに彼の両隣に立つ近衛騎士。そのうち左隣に立つ騎士と目が合った、ような気がした。濃紺の髪に紫色の瞳とは珍しい。そんなふうに思って、つい視線を向けてしまったのだ。
「……先生?」