記憶をなくした女騎士、子育てに奔走していたら元彼が追いかけてきたらしい

6.

「シア先生」
 教室の入り口に、一人の女の子がひょこっと顔をのぞかせた。
「ちょっとわからないところがあって、教えてほしいのですが……」
 女の子はシアとランドルフを交互に見つめている。シアに声をかけてみたものの、ランドルフまでいるとは思っていなかったと、そんな仕草にもみてとれる。どうしよう、と困っているようだ。彼女はまだ幼いが、それでもランドルフがこの国の偉い人という認識はあるのだ。
「話は終わりましたから。シア先生をお返しします。では、また後ほど」
 優雅に微笑むランドルフは、護衛を引き連れて教室を出ていった。最後の一人が部屋を出るまで、シアは視線でその姿を追う。
「シア先生?」
 声をかけられ、現実に引き戻された。
「あ、ごめんなさい。それでわからないところってどこかしら?」
 それからシアは、彼女が納得するまで丁寧に付き合った。
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