婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

9、友好

私はベンジャミン王を、城の裏手にある小高い丘へと案内した。

ここなら人目を忍び、静かに話ができる。

誰にも邪魔されず、そしてなにより、彼――クリフと再び向き合うにはふさわしい場所だと思った。

「ここで本当に、国王陛下と会えるのか?」

そう問いかけるベンジャミン王の声には、わずかな不安が混じっていた。けれど私は、迷いなく頷いた。

「はい。彼なら、きっと来てくれます。」

私が昨夜、急ぎで書いた手紙には、事の次第と、私の切なる願いが綴られている。

クリフがどんなに忙しくとも、きっとその真意を汲んでくれるはずだ。

だって彼は――私が知っている、あの頃のクリフに戻りつつあるのだから。


ベンジャミン王は私の顔を見つめた後、ふっと息をついた。

「君の信頼は深いのだな。」

「ええ、彼は変わりました。自ら兵を率いたあの日から。」

風が丘を渡る。あの懐かしい香りが胸を締めつける。

そして私は、丘の向こうに誰かの姿が現れるのを待った。

きっと、来てくれる。あのまなざしを、再び信じているから。
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