婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

8、侵略

そして翌日、とんでもない知らせが国中を駆け巡った。

「ベンジャミン王がこの国に攻め込んでくるですって……?」

私は耳を疑った。あの、私たちに食料を送ってくれた優しい王が?

そんなはずない。きっと誰かの陰謀だ――。


「そんなの嘘よ!」

私は思わずグレイブに叫んでいた。

だが彼の表情は険しく、現実を突きつける。

「だが……もう兵は国境付近まで来ているという情報もある。偵察隊が確認したそうだ。」

心臓が凍るようだった。

あの穏やかだった日々が、こんなにも脆く崩れてしまうなんて。

私たちは一時的に家へ戻されていたけれど、いてもたってもいられず、私はグレイブの手を引いて再び宮殿へと向かった。

そこには、騒然とする兵士たちと緊張の面持ちの大臣たちがいた。







< 98 / 125 >

この作品をシェア

pagetop