家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

第1部 売れ残り令嬢と、成り上がり伯爵の縁談

私はエルバリー公爵家という、由緒正しき名門に第一公女として生を受けた。

病弱でもなく、躾や教育にも恵まれ、貴族令嬢としての教養も人並み以上に身につけてきた。

しかし、私にはひとつだけ、人には言えない大きな悩みがあった。

――そばかす。

幼い頃から私の頬には、小さな斑点がいくつも浮かんでいた。

目立たぬようにと化粧を重ねても、近くで見ればはっきりと分かってしまう。

それは家族にとっても、まるで「不名誉」のように扱われた。

「なぜクラリスだけ、あんな顔なのかしら」

「お義姉様にも、そんな特徴はなかったはずよ」

そんな声を、小さい頃から何度も耳にしてきた。

母は気の毒そうな顔をしながらも、私を慰めてくれることはなかったし、

父も「もう少し見映えが良ければ」と眉をひそめるだけだった。
< 1 / 300 >

この作品をシェア

pagetop