家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

第5部 恋のまねごとと、伯爵の怒り

舞踏会のざわめきの中、ひときわ高貴な装いの紳士がルシアに近づいた。

「これは……エルバリー公爵令嬢では?」

彼の声に周囲がざわめく。

ルシアは涼しい顔で一礼した。

「はい。エルバリー家のルシアです。」

まるで事務的に処理するような素っ気ない態度だったが、相手はそれに構わず、さらに踏み込んだ。

「そう言えば、公爵令嬢は婚約がお決まりだとか。」

一瞬、空気が凍った。

ルシアはピクリとも動かず、何も言わない。

「婚約?」

私は思わず声を上げた。

頭の中で言葉がこだまする。

「知らないのですか?」

声をかけてきた紳士は、やや驚いたように眉をあげた。

「エルバリー公爵令嬢は、アルバート・フェルゼン王子との婚約が発表されたばかりですよ。」

「えっ……?」
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