家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

第10部 ふたりの城と、落ちぶれた家族の末路

翌月、セドリックは国王の言葉通り、爵位を昇進し、正式にグレイバーン侯爵となった。

「よかったわね、セドリック。」私は彼の肩にそっと手を添える。

「……ああ。今日から、グレイバーン侯爵だ。」

そう呟く彼の横顔は変わらず落ち着いていて、浮かれる様子もまるでない。

新たな爵位を得ても、おごらない——そんなセドリックだからこそ、私は惹かれ続けているのだと思う。

「そう言うクラリスもそうだろ。」

「え? 私が?」

「グレイバーン侯爵夫人。」セドリックが、からかうように笑った。

「……やだ、なんだかくすぐったい響きね。」

私が照れ笑いをすると、セドリックも笑った。

爵位が上がっても、こうして二人で笑い合える。

変わらない日々と、変わらぬ愛。

それこそが、何よりも誇らしく、幸せなことなのだと私は実感していた。
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