あなたの子ですが、内緒で育てます

23  目指せ、復縁! ※ルドヴィク

 俺は妻を愛していた。
 そうだ。
 セレーネを愛していたのだ。
 仲睦まじかった過去を振り返る。
 俺とセレーネが結婚した年のワインが注がれたワイングラス―ーそれを手にし、感傷に浸っていた。

「俺たちは、どこかで道を間違ったんだな」

 今も間違いだらけか……
 セレーネに贈り物を受け取ってもらえなくなった。
 そのため、俺は考えた末に、セレーネへの愛を綴った言葉を書いたカードを贈ることにした。

「詩なら得意だ」 

『薔薇の花を毎日眺めている日々に別れを告げ、野の花を愛でただけで君の心が離れていくとは思わなかった』(以下略)

 なかなか、いい感じにできた。

「よし、これをセレーネに届けろ」

 侍女に命じ、カードを届けさせた。

「セレーネ様からのお返事です」
「早いな。そんなに俺からのメッセージを楽しみにしていたとは」

 まったく、素直ではない女だ。
 セレーネめ、焦らすのがうまい。
 立派なカードの返信が、なぜかメモ用の紙だった。

『薔薇の花を愛でる生活をやめ、質素に暮らす気持ちになられたようで、安心しました』

 なぜか、俺が節約生活を送ることになってしまった。
 俺の愛のメッセージが、生活報告メッセージに勝手に変えられている?

「もっと、はっきり伝えなくてはいけないようだな」

『自由に飛ぶ鳥を捕まえるように、セレーネ、君を捕まえたい』(以下略)
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