あなたの子ですが、内緒で育てます

24 仕組まれたパーティー

『ルチアノとロゼッテのマナーの練習のため、身内だけでパーティーを開きましょう』

 デルフィーナから、そんな内容の招待状が部屋に届けられた。
 もちろん、ザカリア様にも。
 断るのもおかしいし、なにより、全員で食事なんて珍しい。
 
「ごちそうかな? 贅沢してもいいの?」

 王宮に来て、すっかり質素倹約が身に付いてしまったルチアノ。
 
「え、ええ……。たまには、いいと思うの」

 ――ちょっとルチアノに言い聞かせすぎたかもしれない。
 
 それに、ルチアノとロゼッテが、仲良くするのは悪いことじゃない。
 ロゼッテも最近では、ルチアノになついているし、二人でいる時は楽しそうだ。
 子供同士の関係に水を差したくないという思いもあって、晩餐会を引き受けた。

「セレーネ様の青いドレス、とても素敵ですね」
「ザカリア様が領地から取り寄せたドレスの生地。とても素晴らしいと、仕立て屋が褒めていらっしゃいましたよ」

 ザカリア様の領地から一緒にやってきた侍女たちは、パーティーと聞いて、はしゃいでいた。
 向こうでは、華やかなパーティーがなかったから、侍女たちが盛り上がるのも無理はない。
 でも――

「ザカリア様。申し訳ないですわ。私のドレスは、持っているドレスでよろしかったのに……」
「後見人は?」
「ザカリア様です」
「そういうことだ」

 ――どういうことなの……?

 そう思ったけど、ザカリア様があまりに堂々とした態度だったため、聞けなかった。
 ルチアノは、刺繍されたベストを興味深そうに眺めていた。
 そういえば、ルチアノが豪華な刺繍入りのベストを着るのは初めてだ。
 ザカリア様のパーティー用の盛装姿も初めて見た。
 紋章入りのボタンを面倒そうに留めながら、憂鬱そうな顔をしていても――
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