あなたの子ですが、内緒で育てます

4 奪われた妃の地位

「セ……様……セレーネ様? いかがされましたか?」

 ジュストの声が聞こえ、我に返った。

「ごめんなさい……。少しうたた寝をしていたみたい」
「構いませんが、お休みになられるのでしたら下がります」

 ジュストは、いつまで私の護衛でいてくれるだろう。
 王妃でなくなったら、唯一の味方であるジュストもいなくなる。
 いなくなる前に、ジュストへの感謝の気持ちを伝えておきたかった。

「ジュスト。私から人が離れていく中、私の護衛を務めてくれたこと、とても感謝しています」
「なぜ、そんな別れのような言葉をおっしゃるのですか……」
「ルドヴィク様は、デルフィーナを王妃にするでしょう」
「さすがにそれはないかと。一時的にデルフィーナ様に愛情が向いているだけではありませんか?」
「それなら、よろしいけれど……」

 さきほどの夢が私の心を (さいな)んでいた。
 そして、デルフィーナは心の声が聞こえるのをいいことに、私が『デルフィーナと子供の命を狙っている』と言いふらしている。
 もちろん、そんなこと考えていない。
 ルドヴィク様の愛情が、私の元から消えたことが悲しいだけ。
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