あなたの子ですが、内緒で育てます

29 お前など王妃ではない! ※ルドヴィク

『ルチアノ王子は無事でございました』

 王宮で起きた毒殺未遂事件――離宮にて、その結末を侍従から聞いた。
 デルフィーナ主導で行われたという発表があり、ロゼッテは罪に問われないことになったらしい。
 
「馬鹿な王妃だ。だが、これで目障りな王妃は消えた」

 デルフィーナは、俺の王妃にふさわしくなかった。
 子を身籠り、俺が力を失ったことがわかると、俺を蔑ろにし始めた。
 セレーネは文句も言わず、黙って王妃の務めを果たしていたのに対し、デルフィーナは文句ばかりだった。

「俺に必要な王妃はセレーネだったのだ」

 今になって気づいても、遅いことはわかっている。
 だが、俺がどれだけ彼女を愛しているか、気づいてしまったのだ。
 戻ってきたセレーネは、以前の彼女より、ずっと美しく優しく、魅力的になっていた。

「取り戻したいが、ザカリアが邪魔だな」

 あいつさえいなければ、セレーネとルチアノ、俺の三人で、暮らせるというのに――

「ザカリアか」

 長く離れて暮らしていたからか、あいつのことはよくわからない。
 特異な力を持つ弟は、王族の中でも忌まわしい存在として扱われていたせいもある。
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